memories

遠野までの道のりは不安でいっぱいだった。

学校が始まった春、車で走る山里の道は桜が満開だった。

道路沿いに等間隔で植えられたピンクの桜の木、

毎朝誇らしげに行き交う車を歓迎しているようだった。

これから始まる職業訓練校の不安を、少し和らげてくれた。

学校にも慣れたころ田んぼに水が張り、

広い水面が鏡のように山や空を映し出した。

近くの民家や沿道に沢山の草花が咲き始め、

行き交うドライバー達を楽しませてくれた。

ふと見上げると、登坂の民家のベランダに、鷹がとまっている。

毎日、同じ場所にとまっている。

見張りをしているんだろうか？

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学校生活は毎日不安だった。

年齢を言い訳に、みんなについていくのに必死だった。

辛い時もあった。

でも負けたくない気持ちの方が強かった。

なにか書けたり、出来たりすると嬉しかった。

特に色を選ぶのが楽しかった。

だから頑張った。

田んぼの水は、あの頃の顔を、どう写すだろう。

見なくてもわかっている。イケてない。

月日はどんどん流れた。

気づいたら月末だったりした。

今年の夏も暑かった。

資格取得に取り組んだ。

ポスターコンペに参加した。ライティングもやった。

へたくそだったが自分なりに頑張った。

自分は何が得意なのか知りたかった。

最後にわかった。

私は”作る”のが好きなんだ”と。

”夢中”になれるものがあった。

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クラスのみんなにいろいろ助けてもらった。

家族、周りのみんなも応援してくれた。

だから挫けず続けて来れた。

ありがとう。本当にありがとう。

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コスモスが風になびいて咲いている。

気づいた時には、山里の稲は刈られていた。

今の自分は、春より生き生きした顔に写っているかな？

ベランダの鷹は、今日も行き交う車を見守ってくれている。