矛盾した美味しさ。

Story

20歳 バーテンダー Ms.Martiniさんからの投稿です。

「お嬢ちゃん、名前で呼んで欲しかったら腕を磨くことだね。」
とお客様に言われてしまった。 私が作ったカクテルに口をつける前に。

東京に雪が久しぶりに降った日だった。
テーブル席には、仕事終わりに飲みに来たサラリーマン達や、
友達と来たであろう女性グループ。幸せそうなカップル。
みんな席について、手をさすりながら「寒かったねー」と言い合う。
そこに私たちサービススタッフが熱々のおしぼりを持っていくと、
「あったかーい」と大事そうに抱える。

カウンターでは、緊張した空気が漂っていた。
私はお客様にバーテンダーとして頼りないと思われてしまったようだ。
必死にお酒の勉強して、資格とって、ようやくカウンターに立てた時だった。
そのお客様に何て返事をしたのか、記憶にない。
「申し訳ございません。精進して参ります。」みたいなことを言ったような気がする。

正直、20歳の私より、何倍も人生経験があるお客様の方がお酒の知識は豊富だった。
経験不足を言い訳にしたくなくて、毎日毎日必死に勉強したし、
美味しいカクテルの研究をしていた。 それでもあのように言われてしまったので、
先輩にカウンターを代わってほしいと相談した。
その方がお客様の為だと思った。

「まだ飲んでもらってないんだろ?」 と先輩がそのお客様のもとに行き、
私のカクテルを飲んで欲しいとお客様を説得してくれた。
お客様は渋々承諾してくださった。
お客様は、エクストラドライマティーニを私に注文した。
私は丁寧に素早く、そのカクテルを提供した。
何て言われるだろう。とすごく緊張して、手が震えた。
「美味しいじゃねーか。」とお客様は私の顔を見ながら言った。
「エクストラドライなのに味わいがまろやか。鋭いまろやかさ。
矛盾してるけど、すごく美味しい。」 そう言ってくれた。
ほっとして、自然と笑顔になれた。
その後、もう2杯別々のカクテルを注文してくださって、
「また来るよ。」と言って、そのお客様は帰っていった。

営業終了後、先輩にお礼を言いに行った。
「よく逃げずに頑張ったな。」と褒めてくれて、
「頑張ったから」とポッキーをくれた。

久しぶりにポッキーを食べた。
主張しすぎることのない、優しい甘さに、歯応えのあるクッキー。
これも矛盾してるな、と思いながら食べた。
その日はぐっすり眠れた。

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愛してやまない一生を。

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